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謎と謎による結合


村上春樹さんに『セロニアス・モンクのいた風景』新潮社 (2014年)という本があるように、春樹さんはモンクの音楽が好きだ。

「頑固で優しく、偏屈だけど正しい――モンクの音楽は、いつも大きな謎だった。演奏も振る舞いも「独特」そのもの。しかし、じっくり耳を傾ければその音楽は聴く者の心を強く励まし、深く静かに説得してくれる」

と紹介されている。

セロニアス・モンクのLPをかけながら春樹作品を耽読する。

モンクの奇妙でかつ孤高の音楽性を聴くと、春樹作品の謎の一端が分かるような気がする。

現実と非現実とをアクロバティックに結合させる行為。

Brilliant Corners Thelonious Monk 1957

A1 Brilliant Corners 7:45 A2 Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are 13:07 B1 Pannonica 8:50 B2 I Surrender, Dear 5:27 B3 Bemsha Swing 7:40

Pure Monk Thelonious Monk 1973

A1 Solitude 3:40 A2 Memories Of You 4:16 A3 I Surrender, Dear 5:25 A4 April In Paris 3:50 A5 I Don't Stand A Ghost Of A Chance With You 4:20 A6 I'm Getting Sentimental Over You 4:01 B1 Functional (Take 1) 9:44 B2 Functional (Take 2) 9:17 B3 'Round Midnight 6:40 C1 I Should Care 3:15 C2 All Alone 4:50 C3 Everything Happens To Me 5:40 C4 You Took The Words Right Out Of My Heart 4:01 C5 Remember 2:43 C6 There's Danger In Your Eyes, Cherie 4:00 D1 Blue Monk 3:45 D2 Ruby, My Dear 4:00 D3 Round Lights 3:57 D4 Pannonica 3:52 D5 Bluehawk 3:37 D6 Reflections 5:10

Monk's Music Thelonious Monk 1957

A1 Abide With Me 0:51 A2 Well, You Needn't 11:24 A2 Ruby, My Dear 5:26 B1 Off Minor 5:07 B2 Epistrophy 10:45 B3 Crepuscule With Nellie 4:37

Monk's Dream The Thelonious Monk Quartet 1963

A1 Monk's Dream 6:26 A2 Body And Soul 4:29 A3 Bright Mississippi 8:34 A4 Five Spot Blues 3:15 B1 Bolivar Blues 7:30 B2 Just A Gigolo 2:29 B3 Bye-Ya 6:01 B4 Sweet And Lovely 7:48

Monk Straight, No Chaser 1967

A1 Locomotive A2 I Didn't Know About You A3 Straight, No Chaser B1 Japanese Folk Song B2 Between The Devil And The Deep Blue Sea B3 We See

モンクの『straight no chaser』(1967年)には、16分を超える「荒城の月」(作曲:瀧廉太郎)(タイトルはJapanese Folk Song)の演奏があり、衝撃的、かつ名演だ。

謎は、自分が好きなテーマでもある。

分からないものを、わからないままに保つのには、力がいる。安易な合理化をせずに自分の中に留めるための力。

謎は永遠に謎のままであることも多く、その余白こそがこの世界を接着剤のように結びつけ、豊かで弾力あるものにしているのだと思う。

●Thelonious Monk, Brilliant Corners (1956)

●Thelonious Monk - Straight, No Chaser (HD FULL ALBUM)

春樹さんの文章を模写していると、何か身体感覚にリズムが染み込んでくるような気がする。 今も暇があれば北斎漫画の模写もしているが、その時も似た感覚を得た。 どういう解像度で自然を観察しているか、そのレンズを覗いていると、まるで後ろで見守られながら同調する感覚になる。

村上春樹さんの『東京奇譚集』も、謎に満ちたこの世界を、鮮やかな筆致で読ませる。

村上春樹『東京奇譚集』「偶然の旅人」

「超能力についても無関心だ。輪廻にも、霊魂にも、虫の知らせにも、テレパシーにも、世界の終末にも正直言って興味はない。まったく信じないというのではない。その手のことがあったって別にかまわないとさえ思っている。ただ単に個人的な興味が持てないというだけだ。

しかしそれにもかかわらず、少なからざる数の不可思議な現象が、僕のささやかな人生のところどころに彩りを添えることになる。 それについて僕は積極的な分析をするか? しない。

ただそれらの出来事をとりあえずあるがままに受け入れて、あとはごく普通に生きているだけだ。」


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