• inaba

生命との共生

森の中にいてWi-Fiもつながらずテレビも見ずレコードばかり聴いて子どもと遊んでいると、人間界の情報から取り残されて、逆に生命界からの情報が溢れていて、この感覚が楽しい。

学生のとき、冬山を縦走して下山すると、なんだか動物になったように人間の生態を客観的に観察するような気持ちになるから楽しかった。

夢を見るように現実を見る。同時に現実を見るように夢を見ている。



さて。

コロナウイルスを撲滅する、とラジオから聞こえてきた。誰が言ってたか発言者はわからなかった。

こうした戦争のメタファーを生命世界に持ち込むのはやめてほしい。戦争による解決は一部の人間の間の特殊で異常で例外的なやり方に過ぎない。

ウイルスは敵ではなくて味方でもなくて。



ウイルスの方が、太古から存在していた。

人間は新参者なのだか、新参者こそ大きな顔をするのはどこにでもある話で。


ウイルスは情報を伝えるためにいる奇妙な存在。(ただ、ウイルスから見たら人間の生態の方が奇妙かもしれない・・)


ウイルスと人間を含めた生命は、最終的にはなんらかの形で共生することで落ち着くのは間違いない。ウイルスが全く消えてなくなることはあり得ない。太古からいたコロナウイルスは今後も定期的に流行し、感染し、情報を伝える媒体として人体という生態系を利用するだろう。人間が都合いいときは人間を乗り物として利用する。植物の花粉のように。


ウイルスの目的は、人間にはわからない。宇宙的な時間での生命の流れの一環としか言えないけれど、基本的には生命情報を伝える役割を担っているのは間違いない。



エントロピーの法則によると、エネルギーは拡散し、バラバラになる方向へとうごいていく。ただ、人間含め、生命という存在はなぜだか、バラバラへ、とは動いていかない。傷は自然に治るし、食事をし続ければ、寿命の範囲内で体は崩壊せずに形を保ち続ける。熱や水の在り方と、生命の在り方はかなり違う。


それはなぜか。

マクスウェルの悪魔」という物理学の難問が、まさに同じ課題だった。

その解答は、「情報」にこそある。

エントロピーの法則で、世界がバラバラになることに対応して、世界がまとまる方向に動くものがあり、それは生命であり、生命場という情報だ。情報は、何かを知る、ということでもあるが、知ることでこの世に情報、というものが発生し、それは世界がまとまる方向に動いている、ということの一環でもあるのだ。

情報とは、これほど奥が深いもので、宇宙のエントロピーの法則とも関係しているようなもの。そう簡単に理解できない。情報化社会の本質が明らかになるのは、これからだ。


情報を伝える、生命と非生命の間がウイルスという存在だとすれば、人間がウイルスと共生して落ち着くのは間違いない。実際、インフルエンザウイルス含め、あらゆるウイルスがこの地球上から消えてなくなることはなく、人間と距離が遠くなったり、関係性が薄くなったりしているだけだ。



そう考えると、世界的に大流行しているコロナウイルスが、どうやって人間との関係の中で平衡状態に至っていくのか、人間の間を生命情報が行き来していることをどう受け止めるのか。

もちろん、宿主のエネルギーを活用しながらウイルスという生命情報は移動していくから、宿主側にも余力がないと、生命まるごと奪われてしまう。個人個人の自衛は大事なことだ。それは今に始まったことではない。


人間の免疫システムは、確かに異物を排除しているから戦っているように見える。戦争の比喩を使ってウイルス撲滅を叫びたくなる気持ちもわかる。


ただ、生命の免疫システムは、自衛のためだけ、自分を守るためだけに準備されたシステムで、国境を超えて侵略し支配するためのものではなく、戦争のメタファーを安易に使ってほしくないな、と思う。



ウイルスと人間とは、ある平衡状態に落ち着き、共生する道しかなく、かつ、感染時にこちら側の生命情報を奪われるから、自分を守るために個人がしっかりしなくてはいけない。


社会的に弱い人は、強い人が守る。

人間は、この自然界の中では弱者だったからこそ、互いを守るために、群れから進歩し、社会を作ってきた。

人間がなぜ一人では生きられずに寄り集まりながら、得意分野で分業化し、社会を作り上げてきたのか。

生命世界の中での人間という存在や、人間が作る社会。そうしたことの本来的な意義が、問われているなあ、と、思う。



どんなことでも、相手の側に立ってみて考えることは大切だ。幼稚園くらいから人間が学ぶ基本のキ。


ここは一つ、一度深呼吸をしてみて、ウイルスの側に立って考えてみれば、何がいま本当に大切なのかが分かるような気がする。それは対話の基本でもあるから。







0回の閲覧

© All right reserved TOSHIRO INABA