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「音もせで 思ひにもゆる 蛍こそ 鳴く虫よりも あはれなりけれ」源重之

7月2日、新刊が出版され、みなさんの手元に届く前に、オンラインですこし話ました。

この時期に、あえて本を買ってもらえる方々に、本当に感謝しています。ありがとうございます。


やっと新刊出たなぁ、と思い、なんとなく気が抜けるように脱力して帰宅しました。


日も暮れて、外も真っ暗になり、そんな夜に外に出ることなんて普段はないものですが、妻がふと外に出てみたら、自宅の庭に、すぐ目の前の木に蛍を発見して、家族で驚きました。

なぜここにホタルが、、、近くに川はあるけど、ここに蛍がいるなんて。

しかも、ふと周囲を見ると、空中を何匹も飛んでいて、光の軌道がうっすら残り、網膜にもうっすら残像が残りました。光の帯が。



新刊「いのちは のちの いのちへ」のあとがきに、実は水俣病の方々への鎮魂の思いを書いてあるのですが、ミナマタの魂のような気がしてなりませんでした。

人生とは、不思議なものです。呼びかければ、特殊な通路を介して、返ってくるものです。







ホタルに、ゲンジボタル(源氏蛍)、ヘイケボタル(平家蛍)という名前があり、日本人の無意識に、いまだに源平合戦、平家物語の影響が残っているのか、と思うと、興味深いです。「平家物語」は能楽での鎮魂の最重要テーマです。琵琶法師も、平家物語を語り継ぐために生まれた職業でもあり。


ゲンジボタル(源氏蛍)の由来は、無念の最期を遂げた源頼政の思いが夜空に高く飛び舞う蛍に喩えられた伝説が由来らしいです。他にも、「源氏物語」の主役光源氏の「光」とホタルが結び付けられたなど、があり。言葉の由来。そこには著作権も誰が命名者か分からないのに、未だに(きっと今後も)呼び続けられる、というのはなんとも不思議なものです。


ヘイケボタル(平家蛍)も、ゲンジボタルとの対比で、似ているがより小型、ということで名づけられたらしく、ゲンジボタルの名称が先のようです。(ゲンジボタルが日本固有種だから、ですかね。ヘイケボタルは、東シベリアや朝鮮半島などにも分布しているようで。)



蛍を見て、ふと平家物語を思い出し、そうしたことも含め、何かわたしたちの「魂」の通路に、蛍という存在が一役買っているのかもしれません。

忘れてはならない「魂」の存在を、呼び起こすためにも。




「音もせで 思ひにもゆる 蛍こそ 鳴く虫よりも あはれなりけれ」

源重之『後拾遺和歌集』




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